消費者金融の自動契約機は全国に存在する。それだけお金を借りたい人が多いということ。
「むじんくん」が最初に登場したときは衝撃だった。金借りるって、サラ金のスタッフにまで知られたくことなんだなあと。
一世を風靡した自動契約機だが、現在はもう契約の主流ではない。
スマートフォンを皆が持つ時代になって、お金の借り方も様変わりしている。
大手はそれでも、駅前での宣伝の意味も大きいのだろう。いまだに多くの自動契約機を用意している。
また、キャッシングのためのカードが即日で入手できる点には、なお価値があるものなのだ。
店舗を持たない消費者金融も多い。オリックス・クレジットなんかはそう。
SMBCモビットなども、赤い小型契約機が多くあったが、どんどん減らしている。これは全廃予定。
そういう立場にある自動契約機だが、カードローンを借りたい人に向け、全国の自動契約コーナーの場所を紹介しようというアフィリエイターは実に多い。
だから私のようなライターにも、その関係の仕事がある。
会社をやむなく止めた私は、フリーのライターの道に入った。
最初に手掛けたまとまった仕事が、自動契約機の道案内である。
Google MapとGoogle Streetを活用して、地域のランドマークから自動契約機までの行き方を案内する。
これはいい仕事だった。
単価は安いが、書き方のコツをつかむと量産できる。地図を読むのは得意だし、非常に向いていた。今だったら、さらに速いスピードで仕上げられるだろうと思う。
最終的には、全国の消費者金融の道案内をひとりで作ってしまい、この仕事は終わりになった。
次にまとめて受けたのが、消費者金融の店舗と近辺のレポ。
駅からの徒歩での行き方と、周辺での時間潰し施設の案内である。自動契約機に行くと、他の人が使っていて待たされることもなくはないから。
最寄り駅の改札と道順の写真を撮り、記事を書く仕事。
1店当たりの字数が多く、少々水増ししないと書くことがない点がしんどかったのだが、単価が高かった。取材交通費も出る。
これだけで、当面生活できるんじゃないかと思うくらいのいい仕事。
取材する店舗も任されていたので、東京や近郊、各地を回るプランニングも立ててていた。
難点がひとつあった。店内の写真を撮れという指示が出ていたのだ。
やむなく、大手の自動契約コーナーを訪問し、店内に入ってやたらと写真を撮った。
法律をかじった私としては、建造物侵入罪を構成するのではないかと思いながら。
でも、仕事だ。無人とはいえモニタでの監視をしていることは知りつつ、内部の写真も撮っていた。ご丁寧に個室の中まで。
この際に、自動契約機にすっかり詳しくなった。ほとんどの時間、人がいないこともわかった。
やや心身の負担はあったが、ハイペースで記事を作成した。
だが、いいことは続かない。やがて業者のほうが、ちょっと納品を待ってくれというようになった。
なんでも、予算が追い付かないのだと。
それでも割はいい仕事なので、ペースを落としつつ取材を続けていた。
ついに、1か月待ってくれとメールが来た。そのあと再開するからと。
正直そろそろ危ないなと思ったのだが、再開を待っている間も取材はしていた。わざわざ出かけはしなかったが、ついでがある。
1か月経っても連絡は来ない。担当者にメールを送るが無視。
業を煮やし、会社の公式サイトから直接担当者の非道振りをメールで伝えてやったら、ついに「気が付かなかった」という言い訳とともに返信が来た。
10か所、待っている間に取材した店舗を納品しろという。勝ったね。
最後の納品で金はもらったからいいが、この追加取材分はついにWebには掲載されなかった。
タダ働きよりはいいけど、せっかくした仕事がまったく反映されないというのもなあ。