昔むかし、巨大イベントが開かれる際には、最寄り駅は混乱していた。
「帰りの切符を今のうちに買っておいてください!」と駅員が拡声器で客に呼び掛けていたものだ。
帰りの切符を持たない人間は、長蛇の列に並ぶ必要があった。
「臨時きっぷ売り場」なんて懐かしいものだ。券売機の場合もあったし、駅員が総出で硬券売ってるときも。
そして、自分の行き先の切符を買えないおばちゃんなどがいると、大混乱に拍車。ああ、別の列に並ぶんだった。
その後オレンジカードが出現した。テレホンカードに遅れて登場したもの。
これは、自動券売機でもって、現金の代わりに切符を買えるだけのもの。
現代からするとアホみたいなカードだが、それでもずいぶん画期的だった。この時代、イベントにおける切符販売問題はまだまったく解決していない。
それからイオカード。現在イオカードと言葉で発したら、「え? イオンカード?」って返されそうだ。
関東大手私鉄はパスネット。
関西では阪急電鉄のラガールスルーから拡大したスルッとKANSAIとか、Jスルーとか。
ここで初めて、切符を買わずに改札を通り抜けられる仕組みができあがった。
そして、徐々に鉄道会社を問わなくなっていった。
でもまだ、所詮はプリペイドカード。残金がなくなれば、改札で止められることも普通。
当時、クレジットカードでイオカード等は買えなかったと記憶する。だから完全キャッシュレスではない。
そしてまだまだ、イベント時の切符売り場の問題は解決していなかった。
こうした時代を振り返ると、タッチで通れる交通系電子マネーは改めて便利なものだ。歴史を手短に振り返っただけでも隔世の感がある。
駅の自動券売機が、わずか3台だけなんて時代がやって来るとは。それも、別に並んだりしない。
ほとんどの交通系電子マネーは、自分の住んでいる地域以外でも使えるから、知らない土地で切符を買わなければならないことも、今はない。
いまだに改札で止まっている人間が結構いるのは情けないと思う。オートチャージしなさい。
Suicaに現金チャージしてもポイントは一切貯まらない。クレジットカードと組み合わせることで、威力を発揮する。
ところで、便利な交通系電子マネーにも若干の落とし穴がある。
それは、他の会社とエリアが隣接するとき。
首都圏や京阪神を始め、複数の電子マネーが共存している地域では特に問題がない。すでに互換性が確立している。
JRの別のエリアにまたがるときに問題が生じるのである。
有名なところでは、熱海を境に、JR東日本とJR東海とで、会社が変わるために交通系電子マネーで改札が通れないもの。
Suica沼津問題。
沼津駅、関東圏から普通電車で行く人間が非常に多いが、出られない。電車は直通しているのだが。
逆に、沼津の人間が、同じ静岡県である熱海で出ようとすると、出られない。
由々しき問題。
新幹線の停まらない沼津が有名だが、お隣の三島でもまったく同様。
他にも、JR東海、西日本の境である米原などに「関所」がある。
いっぽう、瀬戸内海には関所がなくて、JR西日本とJR四国との間は交通系で移動可能。もっとも四国に独自の電子マネーがなくて、四国の入口付近だけICOCAを導入しているからだけど。
熱海以東から電車で来て、沼津で下りるとき、原則ルールは次の通り。ちなみにSuica以外、たとえJR東海の電子マネーTOICAで乗車していた場合でも同じだ。
- 駅員に申し出る。
- Suicaの乗車記録を消す
- 現金で、乗車駅からの運賃を支払う
これが原則だが、実際には裏ルールが採られていた。
上記の3において、「駅員が手動で、Suicaとして清算する」ということが、以前から行われていたのである。
これはJR東海の判断でおこなっているわけだが、別にJR東日本としても困りはしない。
本当にまったく困らないのかというと、わからない。ちゃんとJR東日本のエリアの運賃、入ってくるのだろうか?
それはともかく、乗り越し者のあまりの多さに、JR東海も対策を講じ、ついに沼津・三島に熱海以東からの乗り越し専用精算機を投入した。
この存在を知っていれば、エリアまたぎを承知の上で、Suicaで熱海を通り過ぎることができる。
だが、この精算機常に混んでいるんだそうだ。やはり、事前に切符を買っておいたほうが安全のようである。
ちなみに、モバイルSuicaの場合は方法が限られる。モバイルの場合、駅員に精算処理してもらうか、取り消し処理後の現金払いにするしかない。
モバイルSuicaしかないと、損は承知の上だが熱海でいったん下車して、乗り直すこともできない。モバイルSuicaでは切符が買えないから。
ただし、クレジットカードがあれば、それで切符を買うことは可能だ。
エリアまたぎ問題は、あまりにもサービスが悪いと株主総会でも問題になるようだが、解決は簡単ではないようだ。JR東海において解決するなら、首都圏のSuicaエリアのすべてのデータが必要だから。
沼津近辺だけのために、こんなことはさすがにできないようだ。「すべき」という意見はもっともだけど。
精算機は、限られた地域のデータだけ入れておけばいいから可能なのだろう。
普段と違う場所に出向く際は、お気を付けください。
(追記)
2019年10月より、JR東海のTOICA利用範囲が、東は熱海、西は米原まで伸びることに。
沼津問題はまだ解決しないものの、モバイルSuicaでもって熱海で乗り直すことは可能になった。